居酒屋紹介②

居酒屋紹介の2回目は大阪の天王寺にある「中や」を紹介しようと思う。場所はというと天王寺駅北口を出たらすぐそこにある。そう説明するとこの界隈を庭にしている人なら、そんな店あったかなと首を傾げる人が多いのではないだろうか。一見、通りに面してパチンコ屋や焼肉屋、王将に吉野家などが並び人通りも多く、すぐに見つけやすいと思われやすいが、ちょうど表通りと細い裏通りに別れている立地にひっそりと佇んでいるので、仲間と会話をしながら歩いていると気づかぬうちに通り過ぎているのが常である。
その理由として(特に若者)、店構え自体が「昭和」であり、暖簾が油や埃で力なくなびいている感じが、単なる飲み屋以上の「何か」をよくも悪くも期待しないではいられない。若いカップルが初めて訪れる場所ではないのは確かだ。しかし、そこを勇気を出して暖簾をくぐっていただきたい。飛び込んでくるのはセピア色の古きよき昭和の世界である。一階はカウンターだけの木目のテーブルに10人も座れば肩を寄せあい、席を確保するような居酒屋の王道ともいうべきどこか懐かしい雰囲気に心落ち着かせられる。2階は団体客用の座敷が用意されているが、その上る階段が角度といい狭さといい、過去にどれだけの酔っ払いが転げ落ちては儚い夢を見てきたのだろうと思うほどである。
店内もいい感じで、手書きのお品書きや古びたテレビに止まったままの時計などしっかりと味があり、流れてくる有線の選曲もまた人生の滋味をたっぷりと感じさせてくれる。ここまで書いたが、それだけだとただのノスタルジーな店である。ぼくが通う理由はもうひとつ。料理の旨さが飛びぬけているからだ。
実は店を司る大将とは実家も近くで、ここ数年は釣り仲間としてお世話になりっぱなしなのだが、東京の有名店で修業した腕前は本物で、とくに魚料理に関しては文句のつけどころがない。味付けから飾りまで店内に似つかわしくないほどきれいで絶品である。どんな魚や珍魚でも見事にさばいてみせる腕前と料理のセンスに、カウンターからすぐ覗き込める常連客らはいつも唸らさせられる。
そして以前の居酒屋紹介でもポイントとして伝えた人柄も嫌みがない。空手で鍛えた厚い胸板とメガネの奥の鋭い眼光からその風貌は強面だが、会話をすると昆布のように優しさがにじめ出ているのがすぐにわかるだろう。「都昆布」と同じく噛めば噛むほどその人のいい人柄に心を許し、この店に通うことになるのは時間の問題だ。
是非、大阪の天王寺に訪れたら足を運んでくださいませませ。

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