麻雀界の巨星、墜ちる

小島武夫」さんが亡くなられた。82歳だった。
麻雀に陶酔している方や少しでも牌を握ったことがある方なら、その名を知らない者はいないだろう。
「ミスター麻雀」の異名を持ち、数々の伝説を残してきたプロ雀士である。日本プロ麻雀連盟の初代会長であり最高顧問として、戦後からの日本の麻雀界の礎を築いてきたといっても過言ではない。自らも当時深夜の人気番組「11PM」に出演し、「麻雀」という世間ではギャンブル色が先行していたイメージを払拭し、日本の麻雀人口がどれほどかはわかりかねるが、少なくとも市民権を得るようになったのは小島武夫のおかげであろう。ぼくにとって「小島武夫」「阿佐田哲也」「桜井章一」の御三家は、その生き方も含めて男として痺れるレジェンドとして今もリスペクトしている。
小島武夫の魅力は何と言ってもその「カリスマ性」である。勝負はもちろんのこと「魅せて勝つ」ことを信条に、卓を囲む面子やテレビの視聴者に対して、華やかに、鮮やかに、そしてプロの誇りを背に牌を切る。なので、試合によっては一度もあがることなくオーラスを迎えたり、ハコテンになることもしばしばある(麻雀用語についてはご了承ください)。ただ、どの一局もそれは小島武夫であってぶれることなく意固地に手役を狙いにいく。おそらく、現代麻雀においてその戦法は「古い」とか「割が合わない」といった理由で敬遠される打ち方なのだが、ぼくはその打筋にどこか共感する部分があった。どの試合も勝とうが負けようが小島武夫であって、それ以上も以下もない。そういう人間が少なくなってきている。
晩年の小島武夫は、テレビやアーケードゲームなどメディアや媒体を問わず、80歳を超えても精力的に麻雀牌を握り、おそらく日本でいちばん有名なプロ雀士に違いなかった。
雀荘をたびたび倒産させ借金王となったり、2人の女性との間に子供3人を授かるなど、まさに八方破れな人生を送り好き勝手に生きた代表格である。ときに辛口に、ときに愛情ある含蓄を、出身でもある博多弁で小島節を愛嬌のある笑顔とともに振り撒いていた。全世代が何かしら影響を受けたはずで、当然、我が道を行く男なので嫌う人や批判する人もぼくのまわりにもたくさんいる。異端児特有の感性や相手を非難する解説など、受け入れられないのは仕方がない。それでも麻雀を打つ者は小島武夫の所作や発言にいちいち反応し、酒の肴にする。要するにスターなのである。その極めつけは、動画でも配信されているが、テレビ対局での伝説の役満九連宝燈」であろう。最後に「九萬」を引き、牌を倒すまでの一連の所作が見事というほかない。知らないうちにぼくらは目を奪われ、勝負の流れを追っている。小島武夫たる人間が麻雀という盤上で繰り広げられる、ある種人生ゲームのギャンブルに君臨してきた理由が垣間見ることができる。
小島武夫に纏わる出版物や過去の映像などありたいことにたくさんある。故人を偲び、この機会にその華麗なる雀風や生き方をあらためて目に留めようと思う。
「先生、お疲れさまでした」。合掌。