「お前はどこのワカメじゃ?」

毎年この時期に行う年間行事に、「ワカメ採り」がある。ワカメは冬から春先にかけて収穫され、まさにいまが旬であり、肉厚で柔らかく何もつけずに生でも食べられて、甘味と歯ごたえもありそれだけで逸品になる。ぼくらはそんなワカメを追い求め、今年もホームグラウンドである淡路島に出向いた。
どうやって採るのか。単純である。竹竿の先に鎌を取り付けて、海面に近づいて根こそぎ刈るのである。浮遊するワカメを相方が同じ要領でタモで掬い、ふたり一組でエンドレスにこの単純作業を繰り返すのである。この原始的で文明を無視した作業に、今回は興味本位で勇敢にも新たなメンバーが参加してくれる。即戦力として期待して、前もって潮見表で干潮になる時間を調べてから、正午過ぎに作業を開始した。
単純な作業ほど奥が深いものである。ゆらゆらと水面を泳ぐワカメをタモで掬うことさえ難しい。水分を含んでいるので重量があって、初体験の人はワカメを刈って掬うだけでも四苦八苦している。おまけにテトラポットの先端という不安定な足場の悪さが、危険と隣り合わせで緊張感から抜け出せない。そして掬い上げた重いワカメを上まで持ち運ぶには急峻なテトラをよじ登らないといけない。たかだか30分で皆汗だくでくたくたになる。
たががワカメ、されどワカメ。そんな重労働を約2時間みっしり働いて収穫したワカメはゴミ袋にして10袋もかき集めた。皆すでに全身筋肉痛で、初参加の方々は汗びっしょりでほどよい疲れと眠気でぐったりしている。それでも自然の中で汗をかいて清々しい風を感じながら、悠然と目の前にある大量の黒々としたワカメを眺めていると、充足感でいっぱいになる。今年も無事に終了できて、よかったよかった。
余談だがワカメの茎の根元部分に「めかぶ」というものがある。近年の健康ブームで存知の方も多いだろうが、メカブには、アルギン酸、フコイダンと呼ばれる酸性多糖類や、ビタミン、ミネラル、脂質を豊富に含んでおり、ガンを抑制する効果があると注目を浴びている。
ぼくはその晩、早速食卓に並べた。捨てるところがなく、どんな食材にもマッチしておまけに身体に良いというこの万能なワカメに、ぼくは「お前はどこのワカメじゃ?」と、お約束通り往年の石立鉄男の口調で聞いてからおいしくいただきました。

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