晩秋の夢

すっかり寒くなり、朝夕はコートやマフラーが手放せない季節になってきた。自販機の缶コーヒーもいつの間にかホットに入れ替わり、外回りの営業で冷えきった身体を温めてくれる。ついでに懐も温めてもらおうと、先週いつものメンバーで京都競馬場に繰り出してきた。当日は東京競馬場で「ジャパンカップ」が行われている。
日本馬VS外国馬という最強馬決定戦のレースだが、ここ数年は海外からの有力馬の参戦も少なく、また日本馬もいまいちパンチが足りないメンバーになりがちで、本来の意味合いが変わってきているのも事実である。それでも華やかなG1ということで、現地には参戦できないが京都競馬場のある「淀」に向けて、ぼくらは京阪電車(通称おけいはん)に揺られながらスポーツ新聞をかじりついていた。
晩秋の京都は、同じ関西でも気温の差が大阪とは2、3度違うので風も冷たく感じ肌寒く、どんよりとした雲に覆われて冬の始まりをにわかに匂わせていた。
京都競馬場には年に数回しか訪れないのだが、実は楽しみがある。すぐ近くの伏見区一帯は、伝統的な日本酒の名産地として知られ、「カッパ」でお馴染みの大手日本酒メーカーの黄桜酒造の本社があり、同社が直営店として運営している地ビールレストランのテーマパーク「キザクラカッパカントリー」があるのだ。風情溢れる一角で、大吟醸純米酒にオススメの地酒をきゅっと飲み干し、日本酒に合う肴に舌鼓を打つのが、競馬場からの王道コースである。
勇んで競馬場の門をくぐりぬけたものの、まぁ、外れること、外れること。こんなにも見事にかすりもしないで宙に舞うと、気持ちがいいぐらいだ。ここまでくれば逆に強気になれる。乱暴にもなれる。そして肝心のジャパンカップも終わり、残りは最終レースだけになった。所持金は2千円。夕刻の闇が不安と焦燥感を煽る。振り返ると、夥しい数千枚のみんなの夢や希望や魂が詰まった馬券が寒空の下、宙に舞い、何ともいかんしがたい寂寥感に苛まれた。人が夢を見ることは儚いものなのか。ぼくは有り金を最終レースの「京阪杯」にぶち込んでその時を待った。そして数分後、10倍になって戻ってくるとぼくは曇天に向けて「ヴィクトリー!」と叫んでやった。競馬で正解があるとすれば勝つことだ。ぞろぞろと肩を落として歩く群衆をすり抜け、伏見の夜に胸をふくらまして夜空を見上げれば、月に映ったカッパが手を振ってくれていた。

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