走るオジサン

「六甲シティマラソン」に参加してきた。ランナーとしてではない。顧客が企画している、お得意先や関連会社の社員を招待し、親睦を深めるマラソン大会の取材に行ってきたのである。
マラソン大会の当日は、朝から爽やかな秋晴れが広がり、走らないぼくが宣言するのもおかしいが、文句なくマラソン日和となった。
会場となった六甲アイランドは、神戸港内にある人口島であり、埋め立て地として若い世代に人気を博している。大型複合施設や個性的なお店が並び、広大な敷地にはスポーツイベントが週末には開催され、若い家族連れやスポーツを満喫したい方にはもってこいの場所である。
参加者らは朝早くから現地に集合し、日頃は仕事での付き合いだが今日ばかりはお互い骨休めで、和気あいあいとした雰囲気の中、スタートの瞬間を待ちわびていた。今回はそれぞれ5㌔コースと10㌔コースにエントリーし、風の影響も少なくフラットなコース形態なので、マラソン初心者や親子で参加される方には街並みや潮風を楽しみながら満喫できるだろう。
ぼくは沿道からカメラでランナーたちの雄姿を撮りながら、ゴール手前から声援を送っていた。ゴールが近づくにつれて、苦悶の表情で呼吸が乱れながらも皆必死に前へ前へと足を踏み出していく。
ちょうどぼくの隣にいた小学校の低学年ぐらいの女の子たちが「がんばれー!」「ファイト、ファイト!」などと連呼し、可愛い声援をランナーたちに投げかけていた。その光景は微笑ましく、周りの大人たちやランナーまでもが通り過ぎ行く瞬間に見えない力を与えてくれた。
恥ずかしながら、ぼくは数年前まで年に1回ほど市民マラソンに参加していた。「参加することに意義がある」のもと、仲間内で健康促進の一環として参加し、こんなぼくでも最後は20㌔まで完走できるようになった。もちろんタイムは桁外れに遅い。何せ60代のオジサンに負けているのだから、ぐうのねも出ない。ただ、走ってみてわかったことだが、起伏の激しい山道のコースなどで、もうだめだと自分に負けそうなときに、沿道からの「がんばれー!」という声援がどれだけランナーの気力を後押しし奮い立たせてくれるかを実感した。正直、声援を送る人の気持ちなんてどうでもいい。口先だけでもはや惰性であろう。それでも、走ることは体力や精神力、技術力以上に、ぼくは「己との戦い」つまるところ「孤独との戦い」に尽きると感じている。
マラソンという競技以外でも、普段の生活や社会の中で誰しもが孤立している瞬間がある。そんな心細い自分に「君はひとりではない」とさり気なく提示することが、どれだけ当事者を安心させてくれるか。か弱くても、聞きづらくてもその声援がある限る、人は巨大な相手にぶつかっていけるのだ。
ぼくは感化されたのか、仕事を終えて自宅に戻り、埃が被ったシューズを取り出して近所をランニングしに出かけた。久しぶりのランニングは苦しかったが、月明かりに照らされて思いのほか歩かずにゴールできた。もちろん次の日は筋肉痛で出勤時間に遅れそうになったのは言うまでもないが。

f:id:kaba1981:20171117172645j:plain
f:id:kaba1981:20171117172720j:plain
f:id:kaba1981:20171117172747j:plain