酒と泪と男と女

酒は百薬の長。酒を嗜むことで、薬よりも得るものがあるという。先日、人生で初の「利き酒」たるものを体験してきた。周知の通り、利き酒とは酒の品質を見極めるもので、行きつけの大将が卸している酒販店が「利き酒会」を企画しており、大将にチケットを手配してもらった。恒常的にアルコールを摂取しているぼくも、日本酒はあまり馴染みがなく、全国の銘柄を堪能できると聞いて期待を胸に当日を迎えた。
会場は大阪市中央区にあるシティプラザ大阪。会場にはすでに日本酒好きなおじさんから、冷やかし半分の若いカップルまで、安価で全国の銘酒を味わえるとあって待合室のフロアには人が溢れかえっていた。  
会場で大将らと合流し、受付で利き酒用のグラスをプレゼントされ、いざフロアに潜入。壁際に沿って蔵本の職人たちが全国各地の地酒を抱え、おのおの銘柄や製造工程など特徴をPRしながら、順次に差し出すグラスに一升瓶を傾けていく。瞬く間に、会場内は日本酒独特の甘い香気と鼻をつく酸味で、まだ一口も呑んでもいないのにほろ酔い気分に仕上げてくれた。ぼくは美田(福岡県)、凌駕(新潟県)、堀の井(岩手県)、益荒男(石川県)など、見よう見まねで手当たり次第、口に運んでみた。
「わかんねぇ・・・」正直、全部、旨い。ただ違いがわからない。確かに口当たりや薫りなど微妙に違うのはわかるのだが、それが正しいのかも疑問で言葉に形容することができない。飲む側の感覚の小差だけであって、こう次々に口に流し込んでいると、香味なんて本当はないのではと首を捻りたくなる。詰まるところ、すでに酔っぱらっているのである。
赤い顔で据わった目に映る透き通った清酒に、会場のオーディエンスは何を感じているのか。何でもその道のプロとして、相手の好みに合わせて日本酒を選別し日本酒の楽しみ方や飲み方を提供する「利き酒師」という資格も存在するらしい。日本酒の地位向上を推進し、日本酒という固有で独自の世界を築き上げた和酒を、まずわれわれ日本人が認知すべきだと感じた。男も女も皆、いい案配で酒を楽しんでいる。元来お酒が強くないぼくは一足先に、千鳥足で会場をあとにしたのだった。
ちなみに個人的に評価が高かったのは、黒龍(福井県)とゆきの美人(秋田県)である。機会があれば試してもらえれば幸いだ。