ブルースを蹴飛ばせ

以前にも紹介したことのある、友人である菊永のライブに行ってきた。キクリン(呼び名)はぼくの中学校の同級生で、名前の順でたまたま後ろの席にいたのが彼であり、そこからかれこれ20年以上の付き合いになる。お互いまだ独身で自由がきくこともあり、最近ちょくちょく顔を合わせることが多い。キクリンはクーラーや冷蔵庫などの加工や組み立てを請けもつ会社で働いている。工場主任として現場を任され、工場ラインが滞りなく流れているかを監視しているらしい。そんな彼は趣味で長年音楽活動をしている。幾多のバンドを経験し、現在はギター片手に弾き語りを主に近畿圏のライブハウスで精力的に活動している。ぼくも恥ずかしながらギターをかじっていたが、それこそ中学校時代に彼の家でギターを教わっていたのも懐かしい。中学、高校の多感な思春期に、誰しもが何か悶々と自分の存在意義や自己証明に駆り立てられる経験があると思う。当時、非行に走る仲間もいた。それはそれで当時のぼくらには正直で貪欲だったんだろうと、いまは理解できる。たまたまぼくはラジオから流れてきた音楽に心を奪われたにすぎず、キクリンも同じシンパシーを抱いたのかもしれない。
キクリンの音楽は独創性に溢れている。それは今も昔も変わらない。正直、万人に好かれるとは思わない。ギターの腕前は素人でもわかるほど上手く、名前だけのギタリストよりよっぽど上等で、それだけで食っていけるんじゃないかと関心させられる。彼が渾身に奏でるメロディーに乗せて弾き飛ばされる言霊。まさに誰にも真似できない、というよりも真似をしようと思わない固有なキクリンワールドが魅力なのかもしれない。少し褒めすぎだろうか。毎回、毎回、ライブの告知があると連絡をもらっていたが足を運ぶこともなく断ってきたが、今回、数十年振りにライブハウスに彼の雄姿を見に行くことにした。場所は大阪の扇町にある「扇町para-dise」。天神橋筋商店街の通り沿いにあり、天神祭を間近に控え周辺は慌ただしかった。すこし歩くとタバコ屋の角に地下に繋がる入り口があった。狭い階段で受付を済ませ重い扉を開けると小さな店内に3~4人の人影があった。若い男の子が何人かと壁際にコクりと居眠り中の親父だけだ。何年ぶりかにライブハウスに訪れたが、まだ誰も立っていないステージに照明で照らされたマイクロフォンが物悲しく、ハコ全体を覆っている独特のひんやりとした空気が妙に愛しかった。ステージで同級生のおっさんがギターに汗が流れ落ちるほどシャウトし、お世辞にも上手くないトークで会場を温めようとする気概が照れ臭く、出会ったころと変わらないキクリンの姿にぼくは安心した。気づけば壁際で寝ていたオヤジも手を叩いている。もし彼のライブを一度拝見したい方がいるならご一報を。ただし責任は持ちません。

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