虎の巻

先日、久しぶりに高校時代の部活の先輩と阪神競馬場へ遊びに行った帰りに、ふと、あることを思い出した。

「そういえば先輩。この近くにタイガースファンが集まるお店があるんじゃないですか?」

高校時代、バスケ部に所属しながらも(小生はマネージャー)、先輩とはお互いプロ野球に傾倒し、野球全般、特に阪神タイガースを中心に情報収集に注力して共有しあっていた。当時から阪神タイガースの熱狂的なファンが集まる居酒屋の存在を認知しており、いつかは訪れたいなと話していたのだ。ぼくは携帯で検索すると、そのお店が阪神、阪急の今津駅にあることがわかり、店の名前がズバリ「虎」ということも判明した。これまでテレビなどでも取り上げられていた、黄色と黒の店内で騒ぐタイガース党に会えると思うと胸が高鳴り、ぼくらは急いで仁川をあとにして今津に向かった。

夜の帳に包まれた今津駅にはアルコールの匂いがすでに漂っていた。居酒屋「虎」は地図で確かめることもなくすぐに見つかった。

だが、様子が違う。まるで活気がない。プロ野球が開幕していないからか。しかも店先には「焼肉」という看板の文字が。ぼくらは恐る恐る扉を開いた。店内には阪神タイガースの歴史を彩る、グッズやポスターやサインが飾られていたが、そこはカウンターだけの「焼肉屋」だった。ぼくらが困惑している中、薄暗く細長い店内の先にごつい男がひとり立っていた。

「いらっしゃい」

見た目は強面で大柄なオヤジが、低い声でこちらに声をかけた。

「す、すいません。ここが阪神タイガースのファンの聖地ですよね?」

まだ店を開けたばかりだったらしく、たばこに火をつけながら「そうです。いまは前のオーナーが亡くなって、焼肉店になったんです」と現在の大将らしいその男が答えた。

話を聞くと、以前の大将が亡くなり、オーナーが店を仕舞うのは勿体ないとのことで、誰か探していたところに現在の大将を雇い、タイガースカラーは残したまま、焼肉店として再びオープンしたらしい。すぐ同じ通りにもオーナーのお店もあるらしく、どちらもタイガースカラーを残したまま営業は続けているらしいとのこと。

「だからぼく自身、詳しく野球のことは知らないんですわ」

「それじゃぁ、まずいでしょ」と内心で思ったが、その大将は見た目は強面だが、言葉の端々から好感がもてる印象を与えた。

ぼくと先輩はテレビで見ていた「巨人のたたき」などのメニューを期待していたが、いまはそのお品書きだけが記念に残っているだけで、完全に焼肉店となってしまった。実情を知ったぼくらはとりあえずビールで乾杯し、焼き肉を平らげ同じオーナーが経営するもうひとつの「虎」に足を運んだ。こちらもお好み焼き屋として営業しており、店内はタイガースの備品などに覆われていた。

個人的な感想では、こちらの店のほうがまだ阪神タイガースの匂いが残っているように感じた。どちらにしろ期待が大きかった分、ぼくも先輩も肩を落としたが、話を聞くとプロ野球がはじまり甲子園で試合があるときは、さすがに賑わい、遠方からも足を運んで訪れるそうだ。次回はプロ野球が開幕し、春の気候のいい5月頃に再訪してみようと思う。

 

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