お受験

近頃、通勤途中に普段見かけない学生服姿の中、高校生たちを見かけるようになった。彼らは一様に神妙な面持ちで、参考書や暗記した大学ノートなどに目を配らせている。ぼくは、最後の追い込みをかけている彼らをはたから見ていて、当時の自分の回想に耽っていた。
高校受験はいまから20年前に遡る。受験当日の道中は忘れてしまったが、確実なことといえば、頭が悪く受験したその高校しか道はなかった。
昨今は知らないが、当時(あくまでも通っていた3年間)は大阪で1、2を争うあほ高校だった(名誉のため校名は出しません)。しかも男子高であり、どうしようもない落ちこぼれたちが仕方なく高校の卒業証書を手に入れるためだけに通う学校だった。軍隊のような規律と体罰が日常茶飯事に行われ、高校生をよく形容する、青春だとか恋愛だとかからはかけ離れ、近くの住民からは「日帰り刑務所」と揶揄されていた。
実写版、「男塾」ともいうべきか。入学式のあと、教室に戻ってうしろを振り向くと、北斗の拳の「ラオウ」がこっちを睨んでいた。ぼくはすぐさま振り返り、これからの3年間を想像すると恐ろしくなって、早く退学しなければと本気で思ったのだった。
そんな衝撃的な高校生活の始まりが、人生で一番楽しかったと断言する日がくることなど、このときはまったく予期できなかったのである。
「お受験」という言葉はマスコミから生まれた言葉であり、決して人を蹴散らして勝者になるだけが人生の時間ではない。電車から降りて勇んで志望校に向かう彼らが微笑ましく、他人事ながら無事合格してきてもらいたいと思ったのである。